私達の行く先は天ではなかった。
第肆話 レンの場合・後編④
変なの変なの。ほっぺた痛いし、そうじゃなくてもロンさんの攻撃はすんごく痛かったんだから!それにしても、「死なない程度に仲良くする」ってどういうことなんだろう?
すっごい愛してくれるわけでもなさそうだし……ストベちゃんはやっぱりわからない。
難しい。今まで好きだったのが嘘みたい。嫌い。嫌い。嫌い。
あ、そんなことよりあいかちゃんの家に行かないと!
わたしは妖精界(うえのほう)から見てたから、あいかちゃんの家はわかる。
あいかちゃんはストベちゃんよりわたしを好きになってくれるから好き。わたしは急いであいかちゃんの家に飛んだ。
「あいかちゃん!」
「ひゃっ?!……あ、え、れ、レンちゃんかぁびっくりしたぁ……」
あいかちゃんは本を──撫でて、ではなくて…──読んで何かを考えていたようで、わたしが話しかけると驚いて軽くビクッとした。やっぱりストベちゃんよりおもしろーい。
「レンちゃん、暗い顔してどうしたの?さっきので何か嫌なことでもあった?」
「へ ?ううん、なんでもないよ、何読んでるの?」
なんで分かったんだろう。あいかちゃんは心が読めるのかな。
「そっか、じゃあいいの。ちょっと心配だっただけだから。
今ね、レンちゃんの人間用の名前考えてたの。
これは命名本。名前をつけるのに助けになる本だよ」
「名前……?」
考えたことなんてなかった。わたしは生まれつき「レン」でしかなかったから。
でも、人間さんなら長い名前が必要だよね。
「そう、名前。レモンの旬は冬だから…煮雪(にゆき)れんっていうのはどうかなって思うの、どうかな?」
「にゆき…れん…? なんだか不思議な名前!しかもかわいい!わたし、それがいい!」
「よかった、じゃあこれから毎日よろしくね、煮雪れんちゃん。」
こうしてわたしは煮雪れんという名前と、お洋服を手に入れた。
レンの場合・後編④
2020/05/11 up
2022/09/20 修正